どこぞの石油娘からパーティの誘いがきたのは昨日の話。朝から準備のために出かけ、次に連絡が入ったのは日付が変わる時間だった。
「ブライアンー!!」
「………お前、」
宿の前で止まった白塗りの車から飛び出してきた。
がしりと抱きついてくるに眉をひそめる。口元に近づかなくてもわかるアルコール臭。他にも化粧の所為で判り辛いがほんのり赤い頬、熱の所為で座っている目など証拠は多々あった。最も、普段ではあり得ない大胆な行動で既に証明されているが。
「へへ、会いたかった」
「そうか」
「うん」
常時より高い体温が布を通して伝わってくる。ぴったりくっついて離れないを抱きかかえ宿の部屋に戻る。ブライアンは傍のベッドに投げようとするが、体に回る腕は一向に力が緩まない。
「離せ」
「いやだ」
「おい」
「ブライアンも一緒に寝れば良いじゃない、ね」
ふにゃりと力なく笑うに引き剥がす気も失せ、自分の体ごとベッドへ横に倒すブライアン。果実の香水の香る頭を腕に乗せれば邪魔になる装飾の数々。髪飾り、イヤリングと一つずつ丁寧に外してやる。とろりとした目がブライアンを見つめ、はにかむ。
「飾りが刺さって痛かった?」
「頭までイカれたか、痛覚があるわけないだろうが」
「そうだったね」
飾りが取られ、はらりとベッドに散る髪。ネイルで彩られた指先がブライアンの頬を撫でまわす。何時もの整備士とは違う、女の姿。着飾っただけで女はこんなにも変わる存在なのか。
そう意識した途端無性にキスがしたくなった。依然撫でまわすの指を取り、輝く指先に一つずつキスを落としていく。
「もしかして撫でられるの嫌?」
「……さぁな」
「へへ…。ね、ブライアン」
熱で潤む目がそっと閉じられ、艶めく唇が薄く開かれる。引き寄せられるように重なる唇は病みつきになるほど柔らかい。味わうように角度を変えて食めば上唇に吸いつかれる。
食いつくすように何度も角度を変える。ちゅ、と音を立てて離せば目元を赤く染めるのうっとりとした顔。その表情がブライアンの脳を揺らす。
しゅるりとその誘う唇がブライアンの手袋を噛み、ゆっくりと剥がしてゆく。外気にさらされた手にその唇を落としてくる。中指が柔らかな肉と硬い歯に噛まれれば、感じるはずの無い痺れが脳まで一気に駆け上がる。
「狂ったらどうしてくれる」
「私が直すよ」
「お前に壊されかけてるんだがな」
「嘘ばっかり」
とろけきった目が次第に虚ろへ変わってゆく。何度も落ちる瞼にキスを落とせば傾き落ちてゆくその意識。
薄く開かれた唇に先程の様に貪るのではなく、触れるだけのキスを落とす。嬉しそうに弧を描いた唇はただ静かに寝息を漏らすだけとなった。
セダクティブ ガール
噛まれた指がまだ疼いている。
End
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