首元から伸びるコードに指を絡め巻き込もうとすると横から諌められた。渋々コードを解放し、また定位置に戻る手。
 不定期なサイクルで行われる内部データのチェック。これがまた暇でたまらない。

「視力落ちてない?」
「…変化は無い」
「ふむ、よろしい」

 ノートパソコンを片手に俺と画面を見比べる。「聴覚は?感触ある?」次々とくる質問に少し面倒だが正しく伝えていく。質問タイムも終わったかと思いきや次はデータ処理の為、放置。毎度のことだが、やはり面白くないものである。

 ……今日だけ、暇を持て余しすぎて待ち切れなかった。食い入るようにディスプレイを見つめるに意地悪心が生まれた。


 さあどうしてやろうか。


「……ん、…どした?」

 俺の悪疑心に気が付いたのか、しかし視線を外すことなくの視線はディスプレイのまま動かない。好都合だ、おかげで気付かれずにの腰に手を回せた。

「…………んん?」
「なあ、…」

 漸く異変に気が付いたのだろうが、もう遅い。きょとんと良い顔で見上げてくるの顎を空いている手でとる。咄嗟にの顔に朱が走る。

「な、っ、何やってんの…!?」
「くくっ、騒ぐな」

 普段の俺らしからぬ行動に慌てふためく。いいねえ、更に虐めたくなるというもの。顔を動かして拘束を解こうとするに「逃げるなよ」と耳元で囁く。眉を下げ、落ち着かない顔で俺を見つめ返す。良いぞ、この顔が良い。思わずにやけてしまう。

「う、う…私、な、何か、した?」
「いいや、いつものお礼、だ…」

 お礼だなんて咄嗟の言葉、良く浮かんだと自分を褒めた。しかしそんな言葉にも驚き目を泳がせるは、それはそれは素晴らしいもので。見事に加虐心を煽ってくれる。
 俺は徐々に顔を近づけていった。一瞬目を見開いたかと思えば顔を真っ赤にして目をがっちり閉じる。そりゃあこんなに面と向ってキスなどしたことない所為だろう、その反応は新鮮で酷く興奮した。
 だが、生憎これは暇つぶしなんでね。

「――――へ?」

 が思い描いているだろう流れに反して俺は額にキスを落とす。軽く小さく音をたて一度。そして全ての拘束を解いて俺はと距離を取る。呆気にとられたの間抜けな顔を見て笑いが漏れる。そして一言。

「検査は終わりか?」
「―――っ、ばかやろーーーーーーっ!!!!」


ミスチェベス マシーン


 余韻たっぷりなその赤い顔で怒鳴られても、興奮するだけだがな。


End