弾はほんの一瞬の出来事。瞬く間にその場を貫く。生身の人間は、発射されてからでは到底避けられない。
 そう、生身の人間は。

「また庇ってもらっちゃったね」
「あの程度で穴が開くほど軟じゃない」
「そのくらいわかってるよ。寧ろ自慢だね、私は」

 撃たれた場所を撫でる。撃たれたと言ってもDr.アベル制のレプリカントボディにだ。
 傷一つないその皮膚……見事なものである。見れば見るほどうっとりするこのレプリカントの出来。
 だが、今回はこれで済んだだけなのだ。

「次、壊れちゃったりして」
「そのためにお前がいるんだろ」
「いや、そうだけどさ。流石の私も、もう一回ブライアンを作れって言われたらお手上げだわ。………いや、意地でも作るけどさ」
「そう言うことだ」

 もしブライアンが全壊しようものならに完全修復は不可能だ。ボスコノビッチ博士でも完璧な施設がありながら触ることすらできなかったその身体。こんなどこともわからない戦場で壊れられでもしたら。そう思うだけでは怖くなった。

「あーあ、私もレプリカントだったら良かったのに。そしたらブライアンに庇われずに済んだのに」
「やめておけ、性欲がなくなるぞ」
「何言ってんのばか!」

 ブライアンの皮膚をもう一度撫でる。無傷のはずの皮膚には数々の過去の傷痕。永久機関を手に入れ、普通の銃弾じゃビクともしないはずの表面に多数の傷。それが指すもの。
 はぎゅっとブライアンを抱きしめた。


ブレイク ダウン


 抱きしめ返された腕の傷から目を逸らした。


End